千葉で楽しむ沖縄

大神島は周囲約２kmほどの小島で、交通機関や宿泊施設は島内にありません。人口は５０人に満たないといいます。
集落以外のほとんどの場所は聖地になっており、島人以外決して立ち寄ることができません。
「祖神祭」（ウヤガン）は島人以外何人も、見学することさえできない秘祭です。

この島には、なんとキャプテン・キッドの財宝が眠っているという話があるのです。

調べてみると、１９６０年代にイギリスのロンドン・タイムス紙が「海賊キッドの財宝」に関する記事を載せていました。
これをアメリカのニューヨーク・タイムスが転載し、さらにこれを朝日新聞が大ニュースとして報じました。
そして、１９６６年６月３０日付沖縄タイムス（第一版）は、「海賊の財宝島に眠る？〜島民全滅の伝説と共に」
という内容の記事を掲載しました。
また、当時の週間先島は「キッドの財宝は３０億ドルだった」との見出しで記事にしたそうです。
ちなみに当時は１ドル３６０円で、物価は今の半分以下ですので、今の日本円に直すと、２兆円はゆうに超える額になります。

とにかく、いずれの記事もキャプテン・キッドの財宝のありかが大神島と特定したものでした。
なお、沖縄タイムス紙の「島民全滅の伝説」とは、昔、大神島は海賊に襲われ、生き残ったのは兄妹の２人だけ。
現在の大神島の住民はその２人の子孫であるという民話が残っていることに依るもののようです。

さらに、このキャプテン・キッドの財宝伝説は、もっと古くからあったことが文献を調べてわかりました。
「南方文化の探求」（河村只雄著、講談社学術文庫）によると、河村氏が昭和１３年（１９３８年）に書いた文章の中に
キャプテン・キッドの財宝についての記述があります。
それによると、島の聖所になっている洞窟「イワヌイワヌパナ」に財宝があると昭和１２年に新聞で報道されたというのです。

ちなみに、キャプテン・キッドとは、１６９６年から１６９９年の３年間に海賊行為を重ね、１７０１年絞首刑にされた実在の人物です。
略奪した財宝のほとんどは無人島や人気のない海岸の洞窟に埋めたと言われています。

もっとも、昭和１２年当時は宮古の平良市にある旅館経営者が人足を雇ってこっそりと発掘に出ましたが、
結局見つからなかったとのことです。
６０年代も多くの者が禁を犯し、島のあちこちを探したそうですが、見つからなかっただけでなく、祟りを受けたといいます。

この、大神島の祟りは、かなり強力なようです。
民俗学の調査でさえ、島に入らせてもらえません。上記の河村氏が極秘調査をしたときには、疫病が流行ったそうです。
大神島一周道路がつくられようとしたときには、ブルドーザーの爪が折れ、他の重機が次々に故障しました。
さらに、工事関係者や島民らが相次いで原因不明の病気にかかったそうです。
そのために工事はとん挫し、いまだに島の約３分の１程度で道路はぷっつり途切れています。


さて、この大神島に、よーかいは行ったことがあります。
途切れた道路も見てきました。
過疎化が進み、そのときの島の中学生は１名、小学生は３名だけとのこと。
訪れたときは島に１軒の売店も閉まっていました。

集落で島の人にあいさつしたら、向こうからもあいさつがかえってきてほっとしたものです。
島の中心は標高７５ｍの山状になっているため、集落からは坂道です。坂の途中には貝塚もあります。
粘土質のぬかるんだ道を進むと、最近整備された展望台につきました。
その１本道と途切れた外周道路以外、道らしい道はありません。
もちろん、御嶽などには近寄っていません。
もしかすると、「聖地」は風葬の場所だったのではないかとも想像しました。
展望台からみると、ほとんどが深い森でした。

そんなふうに島のてっぺんからぐるりと観たとき、ふと、確信しました。
この島は、このままで良い。
財宝は、見つからなくて良い。
どうか、そのままで、安らかに。

どんな財宝よりも、ここには素晴らしい空と海があり、島人がいる限り、唄もあるのだから。